金剛バス廃業というショッキングなニュースの後も、毎日のように、バスが運転手不足で減便、路線廃止というニュースを目にします。バスだけではなく鉄軌道も減便に追い込まれる所も出てきました。
運転手のなり手がいない、募集をしても応募がほとんどないという状況だそうで、理由は乗客の命を預かり責任が重く、それと同時に1日10時間以上も待機時間を含め長時間拘束されるにもかかわらず、民間バスの場合年収は300万そこそこと平均的労働者より100万円も低いという、労働条件が相当に悪いためです。何年か前、公営企業ではバス運転手がマメに超勤をすると年間収入は1200万にもなるよと世間が騒いだのはなんだったのかと思います。ただし今は公営でもそんなに貰えないそうです。
勤務条件をよくすると人は集まるでしょうが、そうすると採算が取れなくなるわけで、収益性が低い公共交通事業では、良好な労働条件と採算確保は両立しないことが顕在化してきました。民間や収益を追求しなければならない公営企業に公共交通をこれまでのように丸投げで任せるのは限界に達しているわけです。
株主配当を行っている優良企業でも交通事業部門だけで黒字となっているのは極めて少数で、兼業部門の収益でバランスをとっているのが現実です。黒字になっている会社があるのにお前のところは赤字なのは努力不足だと言われがちですが、日本独特の精神論に過ぎないでしょう。特に公共交通をあまり利用しない人は、利用者負担で運賃を高くすればいいじゃないか、と言い出しますが、観光客用ならともかく生活路線では大幅に値上げすれば当然利用者も大幅に減ってしまいます。
結局事業者の苦し紛れの対応が、減便や不採算路線の廃止と利用者にしわ寄せがいくサービスの切り捨てとなるわけです。サービス悪化が利用者減になり事業者の収支悪化と悪循環となるのは常識的成り行きで、公共交通が社会に必要と判断するならば、この悪循環をここで絶ち切らなければなりません。独立採算制の呪縛を解き放つことが必要でしょう。処方箋は海外にいくらでもあることは、専門家の皆さんが力説される通りです。